数式の美術館

Masaki Kato

カタカナ数式 KATAKANA EQUATION

2020

数式の美術館とは

私が制作した数式を用いたメディアアート作品群を「数式の美術館」と呼んでいる。

「数式の美術館」は、ダ・ヴィンチに代表されるルネサンス期のように、芸術と科学の垣根がない社会を実現するために生まれた。
ガリレオ ・ガリレイは「自然という書物は数学の言葉で書かれている」と言った。芸術家が絵筆などを使って美しい自然の風景を描くように、数学者や物理学者は数字や文字を使って我々の世界を美しい数式で表現する。

「あらゆるモノを数式で表現する」を目標に、数式で表現される美しい世界の一端を味わえるような作品を制作している。

また、「数式の美術館」の名を冠したSNSアカウント(TikTok, Instagram, Twitter)で、作品を発表している。

コンセプト

カタカナ数式とは、「数式を全てカタカナで表現したもの」です。

私は数式には芸術的な価値があると考えています。これまでに多くの数学者や物理学者が数式を、「美しい」と表現してきました。しかし、専門性や難解さからこれまで数式の芸術的な価値は、一部の研究者だけに独占されてきました。一般の人にとっては、数式を読むことさえとても難しいです。

この作品では、数式の難読性を、「カタカナ」で解決しようと試みました。また、数式を誰もが読めるカタカナで表現することで、一部の知識人たちに独占されてきた数式を「解放」することを目標としました。

100年後の未来において、キースヘリングの作品がTシャツなどにプリントされるように、数式が一種のアイコンやシンボルのように人々に受け入れてもらえるような社会を想像して作りました。数式の難読性をカタカナで排除し、ポップな字体で表現しました。文字の表現はこの数式が非常に速い速度でこそ有用であるので、速度を感じられるようなデザインにしました。

有名な物理学者の顔をこのカタカナで隠すことで、これまでの物理学の権威に対する反抗のサインを表現した。

アインシュタイン方程式

アインシュタイン方程式とは、時空間と物質の分布の関係性を示す、テンソルで表される微分方程式 です。この方程式は、宇宙のほぼ全ての現象を表現することができます。例えば、宇宙の年齢や、ビッグバン理論、ブラックホール、超新星爆発、重力レンズ効果 e.t.c…

アインシュタインは、「宇宙は美しなければいけない」という信念に基づき、この方程式を直感的に創り出し、その後10年余りの時間をかけて、定式化しました。この方程式は200年間、重力理論のスタンダードであった、ニュートンの万有引力の法則の伝統を打ち砕き、人々に新たな宇宙の見方を提示しました。アインシュタインの美的センスと、粘り強い計算により創り出された、現代物理の最高傑作の一つです。

アインシュタイン方程式
アインシュタイン方程式から作れられたカタカナ数式