About Masaki Kato
数式をモチーフにメディアアートを制作。
「宇宙」と「がん」を研究する理論物理学者。
パナソニック・ロフトワーク・カフェカンパニーに応援して頂いて、渋谷100BANCH で活動中。

About Concept
「世界(宇宙)は、数式でつながっている」
私は、「宇宙全体は一つの生き物」という仮説を持っています。
宇宙に存在する全てのモノは、生物の細胞同士のように繋がりあっていて、単体では存在できず、全体として機能していると考えています。
もし、全宇宙の繋がりを一つの数式で表現できたら、きっと美しいと思いませんか?
博物学者兼探検家、地理学者であるアレクサンダー・フォン・フンボルト(1769年〜1859年)の「生命の網」という概念に感銘を受け、私が研究する宇宙物理学から得られた知見を元に作品作りを行っています。
「宇宙全体は一つの生物」であるという仮説を検証する一つの具体例を提示しようと、今回の作品を制作しました。宇宙の天体現象「超新星爆発」と、一人の画家「ゴッホ」の繋がりをテーマに制作しました。
About Work
是非、展示しているプロジェクターのフィルターを変えてみてください。ゴッホの中に星が見えてきます。
ゴッホの作品の展覧会に訪れた際に、私の中で「ゴッホ」と「星」の一生が重なり、ゴッホの自画像の中に「星」が見えたような気がしました。
作品説明
私たちが普段見ている世界は、観測の仕方や角度を変えることによって、見え方が大きく変化します。
星と人は全く関係のないように思えますが、私たちの身体は※1超新星爆発の残骸からできていることが最新の研究からわかってきています。この作品では1054年の超新星爆発によって生まれた、かに星雲の画像を分解し、ゴッホの自画像(1889年8月)を再構成しました。
キャンバスには、モノの見方に依存しない絶対的なモノとして数式を配置しました。
※1超新星爆発:太陽の十数倍くらいの重さの星は、自身を燃やすことで光り輝いています。自身を燃やし尽くしてしまった時に、星は死を迎え、今までの数倍以上もの明るさで輝き、爆発(超新星爆発)します。


ゴッホと超新星爆発の繋がり
私はゴッホの感情と星の爆発の類似点を見つけることで、二つの繋がりを証明しようと試みました。客観的に検証するため、ゴッホの手紙を機械学習を用いて、当時の感情を分析しました。感情分析には、弟のテオドル宛の手紙(アルル時代〜亡くなる直前)を使いました。
感情の強度のグラフを見ると、アルル時代に大きな感情の起伏が見られるます。亡くなる直前にかけては感情の起伏が小さくなっているように見えます。これは超新星爆発の過程に非常によく似ています。超新星爆発では爆発が一度落ち着き、エネルギーを貯め込み大きな爆発を迎えます。


−1から+1までのスコアで、プラス側がポジティブな感情で、マイナス側がネガティブな感情に対応します。また、全体としてどんな感情になったかという、感情の強度というスコアで表現します。
例えば、「今日はいい天気だ。このチョコレートは美味しくなかった。」
という記述があったとすると、「今日はいい天気だ。」は「+0.7」、「このチョコレートは美味しくなかった。」は「-7」とそれぞれの文に対して結果が出る。全体の感情は「0」となり、この場合の感情の強度は「1.4」となります。
過去作品①:数式的相性占い
ちょっと先の未来を科学に基づいて、予測する。そして、未来の「幸せ」のオーラを可視化する。
「新たな発見と、価値観を見直すきっかけにしてもらいたい」という思いから開発しました。

「数式的相性占い」では、キットを用いて占います。
キットは、「恋」のキット(お一人で体験用)と「愛」のキット(お二人で体験用)の2種類をご用意しています。

これらのキットでは、
・性格と恋愛傾向
・おふたりのマッチングパーセント(「愛」のキットのみ)
・未来の関係性 ex.)これから幸せなこと、不幸なことが起きた時に気持ちがどうなるか。
を占うことができます。
数式的相性占いでは
①占う対象の「過去・現在」をアンケートを用いて、心理学的に分析する。
②①に基づいて「未来」を数式的(物理学的)に予測する。
占いの結果は、予測結果を一般的なグラフではなく、ジェネラティブアートとして表現しています。図形の中心がネガティブな感情を表し、外にいけばいくほど、ポジティブな感情になります。図形の色はその人の性格に対応しています。

詳しくは下記の記事をご覧ください。
過去作品②:kodou.incとの共同作品
「いのちが光であったなら。」
をコンセプトに、ヒトの鼓動を光に変換する作品群を制作しています。
まずは人間の鼓動から始め、今後は、植物、動物、大地、空気など、様々な<いのち>を光に変換していきます。
パプアニューギニアに、「ホタルの木」と呼ばれる、一本の有名な木があります。
一本の木に数千匹のホタルが集い、完全に同期しながら明滅しています。
「ホタルが同期して光のならば、人間のいのちを光になったとしたら、どんなリズムが奏でられるのだろう。そして、どんな景色が見えてしまうのだろうか。」という問いが湧き上がりました。
この問いを元に、<いのち>のリズムを光にする、「kodou」という営みを行っています。
私はkodou.inc と共に、人々の鼓動のデータを集め、数式的に解析し、同期現象を可視化する作品制作を行っています。
同期現象はそれぞれのヒトがお互いに干渉し合うことで、徐々に周期が揃っていく現象です。
この作品では、60人規模のイベントを開催し、その際に取得したデータを元に制作しました。それぞれの一点一点が、それぞれの人の鼓動を表現しています。
この作品では、人間同士の複雑な絡まりあいを表現するために、「カオス理論」を採用しています。
「カオス理論」とは、数的誤差により、事前に結果を予測することができない複雑な様子を示す現象を扱う理論です。一匹の蝶の羽ばたきが、地球の裏側で竜巻を引き起こすかもしれないという、「バタフライエフェクト」の元になっています。
過去作品③:豚の角煮方程式(BUTA-NO KAKUNI EQUATION)-4人分-
豚の角煮方程式。豚の角煮のカロリー(エネルギー)と作り方を数式で表現しました。
この作品はエネルギー保存則と、豚の角煮の作り方をできるだけシンプルに表現しようとした作品です。
ある料理の総カロリーの計算は、その料理に使われている各材料ごとのカロリーを足し合わせることによって計算されます。
そのような単純な足し合わせができる物理学的な背景には、全ての反応において、エネルギーが保存しなければいけない(エネルギー保存則)の考え方があります。
物理学の一般的な法則が、身近な料理にも結びついていることを知ってもらえれば幸いです。
また、料理の作り方を文章や映像で表現するよりも、もっとシンプルな形で料理を表現しようとしました。数式でどんな材料が必要かだけのみを示しています。

